
数年前、ほぼ毎日通る近所の焼肉屋の入口に「ソウル未来遺産」の認証板が掲げられて、その時から “一体何だろう?” って思っていたんです。
街なかでも食堂だけでなく、本屋、通り等所々で見掛けるので、この機会に一度、未来遺産がどういう物なのかを調べてみよう!と思い立ちました。
その内容を知るに “ふぅむ、なるほど” と。
今回は、未来遺産の意味と共に、未来遺産に選定された数ある「飲食店」の中から、市庁周辺(中区)にある8店を ご紹介してまいります^^
さて、まず「ソウル未来遺産」とは・・・
「文化財」「文化遺産」としては登録されていませんが、ソウルの近現代の様子をとどめた物の中で、未来世代に伝えるに値する価値がある、有形・無形 すべての物をいいます。
現存する物である為、価値評価においても、保全の面でも不完全。また 急激な社会変化に伴い、そのような物が次々と消滅・破損している現状をふまえて、近現代のソウルの人々が共に作り上げてきた共通の記憶、また 100年後の宝物として守って行こう!という趣旨に基いて、選定されました。
それでは、そんな「未来遺産」に選ばれた食堂=グルメ店のご紹介です!
目を通したところ、ソウル市内に全部で 約50店舗ほど。今回はその中でも行き易いエリアの1つ、市庁近辺の8店です。
店名のすぐ下の項目は、
▶開業年代/未来遺産選定年
▶選定された理由(保存の必要性)と追加説明
となっています。どうぞご覧下さい♡♡♡
高麗参鶏湯(コリョサムゲタン)
▶1960年/2013年
▶開業から現在まで、同じ地域で2代家業を引き継いでいる参鶏湯専門食堂。参鶏湯の店ではソウルで最も古い老舗であり、ソウルを代表する食堂の1つでもあります。6階建ての店の建物の屋上に 韓屋の軒(のき)が置かれていることで、この店を記憶する人も多くいます。
(写真引用 Instagram)
▶住所(市庁本店)
ソウル特別市 西小門洞 55-3
(中区 西小門路11ギㇽ 1)
▶電話番号 02-752-9376, 2734
▶営業時間
10:30~21:30
旧正月・秋夕当日休み
▶メニュー例(価格の単位はウォン=W)
高麗参鶏湯 15000
山參参鶏湯 21000
あわび参鶏湯 21000
「ミシュランガイドソウル 2017」にも選定され、ますます話題に上っています。生後49目の雄鶏を使用し、4年物の錦參をはじめとする各種漢方を3時間以上煮込んで作られた参鶏湯。肉は脂肪が少なく淡白な味として知られており、その為か開業当初から中国人や日本人が、韓国食体験コースとして好んで訪れました。
儒林麺(ユリムミョン)
▶1960年/2014年
▶開業から現在まで、都心部で3代家業を引き継いでいる蕎麦・うどん専門食堂。長きに渡って 庶民の食文化を見せてくれています。
(写真引用 Instagram)
▶住所
ソウル特別市 中区 西小門洞 16
(中区 西小門路 139-1)
▶電話番号 02-755-0659
▶営業時間
月~金 11:00~20:30
土日 11:00~19:00
旧正月・秋夕の連休休み
▶メニュー例(W)
もりそば 8000
ビビンそば(甘辛) 9000
石鍋うどん 9000
蓬坪(ポンピョン)産の蕎麦、5月に捕れたカタクチイワシのみを使用する等、各材料にこだわりをもっています。かすかに甘味がありながら深い味わいのあるスープも美味しく、地元の常連客も多いです。また 人気ドラマ「星から来たあなた」の撮影地になって以来、海外からの旅行客が多く訪れるようになりました。
普州会館(チンジュフェグァン)
▶1962年/2013年
▶開業から現在まで、3代家業を引き継いでいるコングッス専門食堂。開業当初から同じ場所で営業しています。現在の店舗は 1970年に建てられた1階建てセメントブロックの建物で、西小門一帯の時代的な姿も垣間見ることが出来る大衆食堂です。
(写真引用 Instagram)
▶住所
ソウル特別市 中区 西小門洞 120-35
(中区 世宗大路 11ギㇽ26)
▶電話番号 02-753-5388
▶営業時間
11:00~22:00
年中無休
▶メニュー例(W)
冷コングッス 10000
キムチチゲ 7000
キムチ炒め飯 7000
看板メニューは、豆を挽いたスープで味わう 冷コングッス。使われている豆は 江原道のファンテ(황태)豆で、こってりした濃厚なスープが特徴です。また 麺には豆粉、ジャガイモ粉が混ぜ込まれており、薄い黄色で硬めの食感になっています。スープにも麺にも 添加物は一切使われていません。
当初は 週中の会社員が主な客でしたが、現在では老若男女、年齢を問わず客層は多様です。日本のテレビで紹介された後、日本からも多くの旅行客が訪れるようになりました。
ウノ食堂(ウノシッタン)
▶1932年/2013年
▶開業から現在まで、3代家業を継いでいるコリコムタン専門食堂。天幕を張った店舗から始まり、同一地域内で81年間継続して運営されているこの店は、ソウルで最も古い食堂の1つです。(2018年で86年間になりますね!) 現在の建物は 1958年に建てられた物ですが、庶民の食文化史の面からも保存の価値があります。
(写真引用 Instagram)
▶住所
ソウル特別市 中区 南倉洞 50-43
(中区 南大門市場4ギㇽ 28-4)
▶電話番号 02-753-3263
▶営業時間
月~金 6:30~21:00
土日祝 6:30~16:00
旧正月・秋夕の当日と翌日休み
▶メニュー例(W)
コリコムタン 22000
トガニタン(牛の膝皿の軟骨スープ) 17000
ソルロンタン 9000
コリコムタンとは 牛の尻尾(テール)スープで、この店の代表メニューです。尻尾だけを煮込んだすっきりとした淡白なスープに、大ぶりのぶつ切りが2個入っているのが特徴。添加物は一切使われていません。肉汁を逃さない為に 節単位で切り分け、噛む程に感じる肉の香りと、尻尾骨特有の食感を維持しています。
ラ・カンティーナ(La Cantina)
▶1967年頃/2013年
▶開業から現在まで継続営業されている、韓国初のイタリアンレストラン。乙支路1街一帯の時代的な姿を見せてくれる場所でもあります。2012年に改装するも、当時の価値を重要視して、大きく変えることなく維持しました。
(写真引用 Instagram)
▶住所
ソウル特別市 中区 乙支路1街 50 サムソンビル地下1階
(中区 乙支路 19)
▶電話番号 02-777-2579
▶営業時間
月~土 11:30~23:00
日祝 17:00~23:00
年中無休
ラストオーダー21:00
休憩時間 16:00~17:30(月~土)
▶メニュー例(W)
各種パスタ 16000~18000
ロブスターコース・ ステーキコース
各40000~50000
開業当初は、純粋なイタリア食材と料理者を求めるのが難しく、真似て作った水準の料理でした。イタリア大使夫人が料理法を教えてくれたこともあります。高価だった為一般市民は普段は行きにくく、見合いの席等に利用。主な客層は重要人物たちで、週末には外国人客が90%を占めました。また 雰囲気を保つため、洋服を貸与したりもしていました。
1982年に、龍山アメリカ軍ホテルとウォーカーヒルホテルで働いて来たシェフを迎え入れて、本格的な伝統イタリアンをスタート。現在では一般市民も多く訪れ、雰囲気、接客がとても良いと評判です。
武橋洞(ムギョドン)プゴチッ
▶1968年/2013年
▶開業から現在まで2代家業を継いでいるプゴクッ専門食堂です。メニューはこの一品しかありません。
(写真引用 Instagram)
▶住所
ソウル特別市 中区 茶洞 173
(中区 乙支路1ギㇽ 38)
▶電話番号 02-777-3891
▶営業時間
月~金 7:00~20:00
土日 7:00~16:00
ラストオーダーは閉店時間の1時間前
旧正月・秋夕の連休休み
▶メニュー例(W)
プゴクッ 7500
プゴクッは、干しスケトウダラのスープです。まず牛肉をどろどろになるまでじっくり煮詰めた濃い汁に、スケトウダラの頭と骨を入れて、12時間火加減をみながら煮ます。
そこに ふやかした蕎麦粉を挽いて入れて、更に12時間熟成させることで、タラの味のしつこさや苦みを中和させ、更に旨味を出しています。江原道高城郡のタラを使用し、豆腐と大根も プゴクッのすっきりした味を倍加させています。
この店の客層は幅広いですが、昔を懐かしむ50~60歳代が多く、また平日の朝から昼に客が多く、夜には少ないのが特徴です。清渓川の復興(2005年9月末完成)以降は 家族連れが増え、子供にはスープを無料で提供しています。外国人客の中では日本人が多く、1日に30~50人ほど訪れます。
湧金屋(ヨングモッ)
▶1932年/2013年
▶開業から現在まで、3代家業を継いでいるチュタン専門食堂です。81年間(2018年で86年間)運営されて来た韓国食堂で、茶洞一帯の時代的姿を見せてくれる場所でもあります。
(写真引用 Instagram)
▶住所
ソウル特別市 中区 茶洞 165-1
(中区 茶洞ギㇽ 24-2)
▶電話番号 02-777-1689
▶営業時間
月~金 11:00~22:00
土日 11:00~20:00
第2,4,5日曜休み
旧正月・秋夕連休休み
▶メニュー例(W)
チュタン 10000
どじょうチヂミ 18000
チュタン(チュオタンとも言う)とは、どじょう汁のことです。湧金屋のチュタンはソウル式であり、味噌を基本にしつつ全羅北道の扶安産のどじょうを丸ごと入れて調理する方法が、京畿道以南のどじょう汁とは異なっています。
牛の内臓と 胸の骨と肉で取った出汁に、油揚げ、豆腐、きのこ、カボチャ、ネギ、玉ネギを入れて煮ながら、辛くピリッとした旨味を出します。ここに麺とご飯を入れて食べるのに、ユッケジャンのようにさっぱりした味は逸品。大きめの土焼きの器で提供され量もたっぷりです。
この店の長い歴史ほどに、常連客は幅広く多様です。最近は近くの会社員たちが好んで訪れ、また ブログや放送による口コミによって訪れる若い層の客も増えています。どじょうを丸ごと食べにくい場合は、店員に伝えるとミンチにしてくれます。
富民屋(プミノッ)
▶1956年/2014年
▶開業から現在まで、3代家業を継ぐユッケジャン専門食堂です。
(写真引用 Instagram)
▶住所
ソウル特別市 中区 134-4
(中区 茶洞ギㇽ 24-5)
※住所と地図で示された店の位置が違っています。道路名住所は↑上の写真でかすかに見えるように “24-5” で間違いないのですが、この住所が示すすぐ左横に“富民屋”と…。
▶電話番号 02-777-2345, 4323
▶営業時間
月~土 11:00~22:00
休憩時間 14:00~17:00
日・旧正月・秋夕休み
▶メニュー例(W)
ユッケジャン 9000
牛ミノコムタン 10000
この店の代表メニューであるユッケジャンは、ネギを丸ごとたっぷりと煮た出汁に、長く裂いたともばら肉を加えて旨味を出しています。じっくり煮込んだネギからの甘みと、さっぱりピリピリしたスープの味、やわらかく香ばしい牛肉が混じり合って醸し出す調和が一番の特徴。ネギを追加したければ惜しみ無くのせてくれます。
~いかかでしょうか。
飲食店の選定基準としては、開業から数代に渡り現在まで受け継がれている店であることや、それぞれのメニューの独自性やこだわり、加えて、食堂自体が昔ながらの建物であること等、庶民の食文化史的な視点から見て、保存する価値有りと評価された物になっているようですね。
私はこの中で3軒行ったことがありますが、どこも美味しいとは思っても、使われている材料や調理方法も こんなに凝っているとは、全然知りませんでした。もう一度行って味わい直したいくらいです(汗)
「ソウル未来遺産」――なかなか勉強になります!
エリア別に分けながら、今後もシリーズとして続けてご紹介して行く予定です。
ソウル旅行でお食事をする食堂を決めるのに、少し変わった視点から選んでみるのはいかがでしょうか。
※尚「店舗情報」に関しては、韓国のグルメサイトを参考にしながら作成していますが、営業時間や価格などは変更される可能性があります事をご了承下さい。
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