
「ソウル未来遺産」~すでに長い年月を経ていながらも、未だに利用・使用されている為に「文化財」とはなり得ない、有形・無形の文化的価値のある物。
それらを未来に残すために自分たちで守って行こう!という、市を挙げての取り組みです。
政治・市民生活・文化芸術…等5つの分野があって、前回からご紹介している飲食店は「市民生活」分野です。これには飲食店ばかりでなく 他にも、理髪店、靴屋、洋服店、本屋、薬屋・・・等々、いろいろな店や場所が含まれていますよ。
さて!!
それでは「未来遺産」に選ばれたグルメ店。(=という事は、必然的に“老舗”ということになりますね)
今回は、地下鉄の駅にして2号線「乙支路入口」~「乙支路4街」周辺までの7店を順に並べました。
前回と同じく、店名のすぐ下にある年代は、開業年/未来遺産選定年。続いて、選定理由(保存すべき価値)と補足説明となっています。
それではどうぞ、ご覧下さい♡♡♡
明洞(ミョンドン)ハルメナッチ
▶1950年/2013年
▶ 開業から現在まで、同じ地域内で継続営業されているタコ炒め専門食堂です。何と言っても入口がとても狭いので、明洞の中心を歩いたらそのまま通り過ぎてしまう程、小さく古い店。
(写真引用 Instagram)
▶住所
ソウル特別市 中区 明洞2街 31-7
(中区 明洞8ギㇽ 35-1)
※道路名住所の番地が地図と異なりますが、韓国語のサイトや地図ではすべて35-1と出て来ます…
▶電話番号 02-757-3353
▶営業時間
11:30~22:00
旧正月・秋夕の連休休み
▶メニュー例(W)
タコ定食 9000
タコ炒め 23000
代表メニューは、タコ炒めとタコ定食です。甘辛い特有の味は、水をたびたび飲みながらもまた食べたくなり(←韓国では「中毒性がある」と表現します)この店に一度行ったら 必ず常連になってしまうほど魅力的。
タコ料理は 注文を受けてから即席で料理され、薄く切ったキャベツの上にのせられて出て来ます。量も充分。また一緒に出て来るおかずも人気があります。
客層は30~40歳代が多いですが、歴史が長いだけに名が知れており常に人が一杯。食事時でなくても常に半分以上は席が埋まっていて、もちろん食事時には待ち必須です。
全州中央会館(チョンジュチュンアンフェグァン)
▶1974年(1956年)/2013年
▶1974年から現在まで続いている「全州石焼ビビンバ」専門食堂です。この店の前身は、1956年に創業者が全州でスタートさせました。(店の看板には1961年とありますが…) 現在は3代目。
1974年に新世界百貨店主催の「全国民俗飲食競演大会」で大賞を受賞し、最初はソウルの新世界百貨店に入店しました。全州ビビンバを初めて石の器に盛ったのがこの店で、今も固有のメニューを守り続けている大衆食堂として、保存の価値があります。
(写真引用 Instagram)
この店も入口までの通路が狭く
通路前に↓僧侶の格好をした人が目印として立っています
▶住所
ソウル特別市 中区 忠武路1街 24-11
(中区 明洞8ナギㇽ 19 )
▶電話番号 02-776-3525
▶営業時間
8:30~22:30
年中無休
▶メニュー例(W)
全州石焼ビビンバ 10000
石焼ユッケビビンバ 23000
高麗人參参鶏湯 15000
あわび入り参鶏湯 25000
ビビンバには 新鮮なナムル、栄養価が高いトラジ(ユリの根)、きのこ、銀杏、松の実、栗など30種類以上の良い材料が使われているのが特徴です。また 混ぜて食べるソースには、牛の四脚の骨を10時間煮出した出汁に 3年経った全羅道の醬と 刻んだ牛肉を入れて作った、独自の味付け調味料が使われています。
当初は中高年者が主な客層でしたが、最近は若い世代も多く、国内外メディアでしばしば紹介されることで 外国人客も多くなりました。
安東荘(アンドンジャン)
▶1964年(1948年)/2013年
▶開業から現在まで、3代家業を継いでおり、ソウルで最も古い中華食堂です。事業者登録上は1964年開業ですが、口述調査の結果、かつて戦争を逃れて中国から渡って来た創業者が、1948年に開業した物と推定されました。
(写真引用 Instagram)
▶住所
ソウル特別市 中区 乙支路3街 315-18
(中区 乙支路 124)
▶電話番号 02-2266-3814
▶営業時間
月~金 11:30~21:30
土日祝 11:30~21:00
※日祝は~20:00との情報も有り
ラストオーダーは閉店30分前
休憩時間 15:30~17:00
1月1日・旧正月・秋夕連休休み
▶メニュー例(W)
牡蠣チャンポン(白・赤) 9500
ジャージャー麺 6000
特製ジャージャー麺(麺とソースが別々) 8000
揚げ餃子 7000
代表メニューは、にんにくと牡蠣をたっぷり入れた牡蠣チャンポンです。細かく刻んだ海老を味付けしパンに入れて揚げて作ったメンボシャも有名。店舗は地下1階、地上5階建ての鉄筋コンクリートの大きなビルです。
春川(チュンチョン)マックッス
▶1962年/2014年
▶ 春川で開業し、2代家業を継いでいるマックッス専門食堂です。マックッス(막국수)とは “今すぐ(막) 混ぜて食べる 麺(국수)” という意味で、江原道以北の山間地方で食べられていた夜食でした。その食べ物を、この店の創業主が商品化して店を始め、大衆化させたことで知られています。庶民の食文化史的視点から見て、保存価値の高い店です。
(写真引用 MANGOPLATE)
▶住所
ソウル特別市 中区 乙支路4街 61
(中区 乙支路 175-3 )
▶電話番号 02-2266-5409
▶営業時間
月~土・祝 11:30~22:00
日 11:30~20:00
※土は~20:00との情報も有り
旧正月・秋夕の当日と翌日休み
▶メニュー例(W)
マックッス 6000
緑豆チヂミ 6000
蒸し餃子 7000
マックッスチェンバン(鶏+野菜+蕎麦の和え物) 14000
この店の代表メニューであるマックッスの麺(蕎麦)は、熱い湯で生地を作り、熱い釜で3回焼き入れした後に取り出された麺で、粘りが強くて切れにくく、シコシコしているのが特徴です。また 牛の脚骨と鶏の骨を 5:5の割合で混ぜて煮出した出汁を、薬味で和えた麺に入れて食べます。
初期には、故郷を失い他郷で生活している老齢の人々が主な客でしたが、2000年代に入って、若い層もよく訪れるようになりました。日本のテレビや雑誌で紹介され、日本人客も多く来ます。
※注「ソウル未来遺産」ホームページによると、実は選定された店の名前が「サンゴㇽマックッス(산골막국수)」となっていました。その名前の店が見当たらず、店舗情報・写真等から「春川マックッス」のことであると判断しました。
文化屋(ムナオッ)
▶1952年/2013年
▶開業から現在まで、同じ地域で3代家業を継いでいるソルロンタン専門食堂。人工的でない、ソルロンタン自体の香ばしくも淡白な味が、美食家たちの間で有名です。
(写真引用 Instagram)
▶住所
ソウル特別市 中区 舟橋洞 118-3
(中区 昌慶宮路 62-5 )
▶電話番号 02-2265-0322
▶営業時間
6:00~21:00
旧正月・秋夕の連休休み
▶メニュー例(W)
ヤンジソルロンタン 9000
トガニタン(牛の膝軟骨スープ) 15000
コリコムタン(牛の尻尾スープ) 16000
牛の臓物と四肢、右足、尻尾、胸肉と骨を煮出して作った 白濁した濃い汁に、具と肉を入れて出て来るソルロンタンは、ソウル式のすっきりした味です。注文すると、牛の舌や脾臓などの 珍しい部位の茹で肉が サービスで出て来ます。主な客層は中壮年ですが、次第に若い層も増えつつあります。
又来屋(ウレオッ)
▶1946年/2013年
▶ 開業から現在まで、同じ地域で3代家業を継いでいるソルロンタン専門食堂です。又来屋の歴史=ソウルの水冷麺(平壌冷麺)の歴史と言えるほどの有名店。6.25戦争で避難の為一度は土地を離れましたが “再び(又)帰って(来)た” と、店名を改称したとのことです。
(写真引用 Instagram)
▶住所
ソウル特別市 中区 舟橋洞 118-1
(中区 昌慶宮路 62-29 )
▶電話番号 02-2265-0151(HPで確認)
▶営業時間
11:30~21:30
年中無休
※月曜・旧正月・秋夕休みとの情報も有り
▶メニュー例(W)
水冷麺 13000
ビビン冷麺 13000
韓牛の雌牛の尻肉と脚肉などを丸ごと入れて 4~5時間煮て作る出汁に、他の材料は一加えず、蕎麦(麺)だけを入れて提供します。最初は味が薄く物足りないように感じますが、食べ進めると 深く香ばしいスープと麺がよく合い、両者がかもし出す淡白な風味は逸品です。
冷麺の他にも、プルコギやカルビも人気があります。客層は60歳以上の男性が多いですが、近年は若者や外国人客も増えています。
五壮洞咸興冷麺(オジャンドンハムンネンミョン)
▶1953年/2013年
▶開業から現在まで、同じ場所で55年間(2018年で60年)、3代家業を継いでいる冷麺専門の大衆食堂です。まだ皆が貧しかった時期に、看板も無しに開業しました。お腹を空かせた人々が集まり「五壮洞のハムン冷麺が美味しい店」と言うようになった物が、そのまま自然に店名になったといいます。
(写真引用 Instagram)
▶住所
ソウル特別市 中区 五壮洞 90-10
(中区 マルンネ路 108)
▶電話番号 02-2267-9500
▶営業時間
11:00~21:00
第1, 3火・旧正月・秋夕連休休み
▶メニュー例(W)
ビビン冷麺(ハムン冷麺) 10000
水冷麺(ピョンヤン冷麺) 10000
実は 現在「ハムン(咸興)冷麺」と呼ばれているのは、実際の咸興には無い食べ物です。咸鏡南道 興南(ハムギョンナムド フンナム)から国境を越えて南下して来た創業者(おばあさん)が、咸興(ハムン)式 “ノンマ麺” を作って売るようになった物が、後に「ハムン冷麺」と呼ばれるようになったのです。ハムン冷麺はこの店から始まった、という理由です。
水冷麺は、牛の胸肉等の赤身で出した澄んだスープに醬油を加えて生臭さを無くし、さっぱりした味を出しているのが特徴です。麺はシコシコしていて、どちらの冷麺も、昔ながらの独特な味を醸し出しています。
1970年代に大衆週刊誌に紹介されて、口コミに乗りながら店を成長させましたが、今もメニューの幅を大きく広げずに冷麺専門店として営業を続けています。
~いかがでしょうか。
前回と今回で、中区にある 計15店をご紹介しました。さすがにこの辺りは昔からの中心街だけあって、老舗も多いですね。
どこも味の面でも美味しいと評判のグルメ店ですが、こうやってそれぞれの背景まで知ると、何だか味わいが深まりそうです。全部食べに行きたくなっちゃった~(*^-^*)
それでは、また次回です!
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